FC2ブログ
123便が墜落した背景には墜落直後から様々な憶測や誤情報が飛び交い事実が判然としない部分が多数あった。最終的に事故調査委員会が断定(推定)した事故原因に関しては、発表直後から否定的意見が噴出し、独自の研究による仮説が多数挙げられる事態になった。様々な要因が重なって起こった事故の原因は推定に頼る部分が出てくるのも仕方の無いことであり、実際のところ事故調査委員会が出した結論も、専門家による詳細な検証・実験等を踏まえた上での推定を交えた結論である。当然その他の仮説においても推定に基づいた説ばかりであり、事故調査委員会とは違い個人レベルでの研究・推定、さらには個人の私感や思想までもが入り混じっており、もはや荒唐無稽とも言える仮説も多数存在する。

ここでは事故原因等を論ずる前に、まず推定や仮説を排除し 『123便に間違いなく起こっていた推定ではない事実』 のみを羅列していく事にする。

---------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------

1.墜落から7年前に 『しりもち事故』 を起こし、圧力隔壁を修理している。しかも修理ミスがあった。

詳しくは 『しりもち事故とその後』 を参照していただきたい。1978年6月2日、JA8119号機は伊丹空港に着陸の際、機体尾部が滑走路と接触し中破する事故を起こした。この事故によって後部圧力隔壁が破損し、ボーイング社が修理を行ったが修理に欠陥があった。この修理ミスにより圧力隔壁は正常に修理した場合よりも著しく耐久性能が落ちていた。

事故調査委員会はこのしりもち事故時の修理ミスが主な原因で圧力隔壁の破断を招いたと結論付けている。仮に圧力隔壁の破断が事故原因では無かったとしても圧力隔壁の耐久性能が著しく低下していたのは事実である。

---------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------

2.異常事態発生後すぐに圧力隔壁以後の機体後部がほぼ全損している

突然の衝撃音と共に123便の垂直尾翼は大半が破壊され、APU防火壁以降の尾部胴体が脱落、垂直尾翼下方に位置するハイドロプレッシャー(油圧操縦)システムの4系統全てに損傷が及んだ結果、油圧を使用したエレベータ(昇降舵)やエルロン(補助翼)の操舵が不可能になってしまった。『異常事態発生』 のページで詳細は説明しているが、異常が発生したのは間違いなく圧力隔壁より後方の部分であり、垂直尾翼の損壊・尾部胴体の脱落については相模湾で回収された部品で明らかになっている。油圧配管の損壊については、DFDRで見るその後の飛行状態・CVRでのコックピットでの会話内容で明らかになっている。

ここで重要なのは異常事態発生後、ほぼ一瞬のうちに圧力隔壁以後の機体後部の損壊が起こっている点である。後部損壊部分には想定外のとてつもない力が一瞬のうちに掛かったことになる。これだけの破壊をもたらす力は何なのか?この一瞬の力がどこから発生したのか?機体内部からなのか機体外部からなのか?墜落原因の論争はすべてここから始まることになる。事故調査委員会は圧力隔壁の破断により機内の与圧空気が機体後部に流入し、その圧力に耐えきれず内部から損壊したとの結論を出した。しかし航空の素人なら、垂直尾翼を含むこれだけの破壊をもたらすのは機体後部にミサイルや飛行機が激突(機体外部からの力)したのではないか、と考えるのは至極真っ当だろう。内か外か?いずれにせよ機体後部の破壊が一瞬にして起こったのは事実である。

---------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------

3.異常事態発生後、機内で 『減圧』 は確かにあり、機体後方に何らかの 『穴』 が開いてしまった

異常事態発生直後の生存者の証言(詳細は各生存者の証言を参照)

川上慶子さん 『機内後部の天井パネルが外れ、白い霧のようなものが出た』
吉崎博子さん 『ドーンという音と同時に白っぽい煙、失神する乗客が続出』
落合由美さん 『かなり濃い白い霧のようなもの、耳がツンと詰まる、減圧があった、トイレの壁が外れていた、床は持ち上がらなかった』

航空機内で減圧があった場合、機内の気圧と外気圧の差が一定になる間、気温が下がり霧が発生する。3人とも白い霧のようなものを見たと証言しており、この証言だけでも機内に 『減圧』 があった事は確かである。さらには2人が機内の天井パネル・トイレ外壁の破損を示している。機内に減圧があったという事は、機内の与圧空気が相当のスピードで機外に流出した事を示しており、機内パネルの破損については、簡単に言えば与圧空気が相当の圧力をもって流れた為、その圧力に耐えきれずに破損したと考えられる。機内パネルの破損はいずれも客室後部であることから、与圧空気は機内後方に流れていった事がわかる。破損個所は機内上部のみで床等の下部に破損は無かった事から与圧空気の流れはどちらかと言えば機内の上部を通過している。機内後方に与圧空気が流れていったという事は、機内後方のどこかに 『穴』 が開いた事を示している。事故調査委員会はこの 『穴』 は圧力隔壁の破断によって出来た穴を示している。

この事故のキーワードの一つに 『急減圧』 という言葉がある。事故調査報告書では異常事態発生の8秒後には機内の与圧はすべて失われ、気温もマイナス40度にまで低下した等、機内の減圧の度合いはまさに 『急減圧』 であった事が記されている。しかしパイロットが急減圧発生時の所定の対応をとらず、酸素マスクを使用した形跡がない、生存者の証言に急減圧が発生したと感じるような切迫した状況はあまり見られない事などから、機内には 『急減圧』 が発生していなかった(そもそも圧力隔壁の破断が垂直尾翼を含む機体後部を破壊したとしたら機内は相当の 『急減圧』 があったはずである)と指摘する意見がある。ここで問題なのは 『急減圧』 と言う言葉がどのような状況を示しているか という事である。ここで急減圧の事を書き始めたら長くなるので、追って別の枠で解説を試みたいと思う。一つ言えることは世間一般に言われているような 『急減圧』 とは見え方・感じ方が異なる、 『急』 な 『減圧』 が123便に起こった事は確かであるという事である。

---------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------

4.異常事態発生後、運航乗務員3名は酸素マスクを着用していない

上記3の通り、機内で異常事態発生直後に減圧があった事は確かである。本来ならば機内に減圧が発生した場合、運航乗務員(機長・副操縦士・航空機関士)は『デコンプレッション』の発声を行い酸素マスクを着用し緊急降下を行う事が予想される。しかし運航乗務員3名は異常事態発生直後から、おそらくは墜落まで酸素マスクを着用する事はなかった。

実際のCVRを確認すると18時24分、異常事態発生直後(ドーンと言うような音の後)に機長は 『まずい、なんか爆発したぞ』 と言った後すぐにスコーク77(緊急事態発生の信号)を宣言している。その後およそ1分間の状況確認の後、ACC(東京管制区管制所)との交信で22000フィートまでの降下と同高度の維持を要求している。その後実際にDescent(ディセント・降下)の指示を副操縦士に出したのは18時26分。この時点ではEmaergency descent(緊急降下)の指示では無い。

18時32分、航空機関士が客室乗務員との通話で機内の破損状況を確認したときに 『荷物の収納スペースがおっこってますね これはおりたほうがいいとおもいますう』 『マスクは一応みんな吸ってますから』 との認識。18時33分、航空機関士がようやく 『エマージェンシーディセントやったほうがいいと思いますね』 『マスク我々もかけますか?』 と機長に提案した。

ここまでの一連の流れは異常事態発生から8分間かかっている。ここまでの8分間、運航乗務員は間違いなく酸素マスクを着用していない。さらには墜落までほぼ間違いなく運航乗務員は酸素マスクを着用していない。

まず機長がACCに対して22000フィートまでの降下を要求しているが、この時点での123便の実際の高度は約24000フィートである。緊急降下をしなければならないのであれば10000フィート程度まで降下しないといけないのだが、機長は2000フィートの降下しか要求していない。この時点で機長は客室高度警報音が鳴った事もあり、機内で減圧があった事は想定しているであろうが、緊急降下を要するほどの減圧があったと感じていなかったのではないだろうか?

航空機関士が客室乗務員に機内の状況を確認して初めてエマージェンシーディセントの必要性を感じている。しかし航空機関士は機内の破損状況を口頭の確認のみで判断しているだけであって実際に機内の状況を見ている訳では無い。

荷物の収納スペースがおっこってる(穴が開いている)=(本当にそうだとすれば)おりた(緊急降下した)ほうがいいと思いますう
マスクは一応みんな吸ってますから(一応との認識)

航空機関士と客室乗務員の通話を見ても、緊急降下の必要性を感じてはいるものの切羽詰まった会話には思えない。機長へのエマージェンシーディセントの提案も 『やったほうがいいと思います』 程度に留まっており、マスクの着用に関しても、機内では一応マスクをかけているが 『我々もかけますか?』 程度の提案である。両方とも強い提案とは聞こえ難い。このことからして航空機関士は客室乗務員との通話で機内に減圧があった事を認識し、緊急降下をしたほうが安全であると判断はしているが、機長と同様そこまで大きな減圧が起こっているとは思っていなかったのではないだろうか?

要約すれば 異常事態発生後、運航乗務員は当初、緊急降下を必要とする程の減圧を感じていなかったのではないか と言う事である。その後、緊急降下を行おうと考え始めた頃には、すでに機体が操縦不能に陥っている事のほうが運航乗務員にとって重大な事となっており、低酸素症に陥っていた可能性は高いが、酸素マスクの事は頭にはありつつも着用する余裕がなかったのではないだろうか。

上記の推測が正しければ、運航乗務員は事故調査報告書に書かれているような減圧の程度を感じていなかったのだろう。結局の所この推測がどうであれ、運航乗務員が酸素マスクを着用しなかったという事実が123便に 『急減圧』 は無かったと言う仮説の要因の1つである事は確かである。


---------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------


スポンサーサイト



機体に発生した事実||TOP↑
Category
Links